強固な人的基盤を強みに、

地域との価値共創を通じて

地域社会の発展に貢献してまいります

代表取締役 社長執行役員(COO)兼経営戦略本部長 松本尚武
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代表取締役 社長執行役員(COO)兼経営戦略本部長 松本尚武

社長に就任されて約8か月が経過しました。現在のお気持ちを聞かせてください。

 あっという間の8か月でした。社長に就任する前も、経営戦略本部長として経営の一角を担っていましたが、社長としての責任の重さは想定以上のものがありました。また社員の頑張りをこれまで以上に実感しました。一方、代表取締役として当社の業務執行を担うなかで見えてきた課題もあります。当社は基盤の都市ガス事業に加えて、くらしサービス、電力、再生可能エネルギー、海外などの事業を展開していますが、各事業の発展を図る上で、人材がかけがえのない存在であることを改めて痛感しています。人材の育成と組織力の強化を通じて当社グループの経営基盤をさらに強化することが課題だと受け止めています。

2024年度上期の経営環境をどのように評価していますか。

 上期の市況は、原油価格やLNG価格の高騰は落ち着きを取り戻したものの、円安傾向が続き、引き続きエネルギー価格は高止まりしましたが、静岡県内の生産活動や消費活動に大きな停滞は見られませんでした。静岡県は富士山という魅力的な観光資源を有しており、インバウンド需要も堅調だったことなどから、県内の経済情勢は前期から横ばい、または若干の回復基調にあったと認識しています。

都市ガスと電力の販売状況について教えてください。

 ガスの販売状況ですが、家庭用は高気温や節約志向の影響により、販売量は前年同期を下回りました。業務用は空調需要の増加などにより前年同期を上回りました。工業用は新規のお客さま開拓に注力したことなどにより、前年同期を上回りました。電力事業では、使用中戸数の増加などにより、販売量が増加しました。

このように販売状況は堅調でしたが、原料費調整制度によるガス販売単価の下方調整などの影響で、前年同期に比べ減収減益の決算となりました。

上期における注目すべき取り組みを教えてください。

 当社の電力子会社である静岡ガス&パワーが、需給調整市場に参入しました。需給調整市場とは、電力の需要と供給のバランスをとるために必要な「調整力」を、一般送配電事業者に提供するものです。余剰電力の活用や電力供給の安定化など、多くの社会的メリットを有するビジネスとして注目を集めています。需給調整市場は出力の変動が大きい太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などを補完する機能を有しており、再生可能エネルギーの普及促進にも寄与します。当社グループはこの取り組みを通じて、電力の安定供給と2050年のカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

「2030年ビジョン」の概要を教えてください。

 2021年12月に2030年までの経営方針と取り組みを示す「2030年ビジョン」を発表しました。2030年ビジョンでは、地域のお客さまや企業との共創を通じて持続可能な地域づくりに貢献すること、ならびに当社グループの基盤である都市ガス事業の継続的な成長を図りつつ、再生可能エネルギーや海外など新たな成長事業を確立していくことを基本方針として掲げています。

基盤である都市ガス事業の成長に向けた取り組みについて教えてください

 都市ガス事業では、エネファームやガスコージェネレーションの普及拡大、カーボンニュートラル都市ガスの拡販によるカーボンニュートラルの実現などを軸に、基盤事業としての拡大に取り組んでいます。また、ガスコージェネレーション設備の設計・施工はもとより、設備導入のための資金調達やメンテナンスなどをパッケージ化し、製造業を中心とする地域の企業に提供していきます。当社グループは、お客さまニーズに合った適切なサービスを提案することで、エネルギーコストの削減など、地域のお客さまの課題解決に貢献していきます。

LNG調達価格の低減の取り組みについて教えてください。

 短期と中長期の両面から取り組みを進めています。日々の活動においては、割高なスポット調達が生じないよう、需要と供給のバランスをとっていくことが重要です。中長期視点では、カタールや米国での増産によるLNGの需給緩和と価格低下のタイミングを的確に捉え、より安価なLNGの確保に努めていく方針です。他のLNGプレイヤーとの連携強化を図りつつ、シンガポールにある当社子会社の静岡ガストレーディングでタイムリーに情報収集を行い、調達の最適化と事業運営の効率化を図っていきます。

カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを教えてください。

 当社グループは、2030年に再生可能エネルギー電源20万kWの開発を目標に掲げ、太陽光発電やバイオマス発電の開発などに取り組んでいます。最近では、農業を営む農地の上部空間を利用して太陽光発電設備を設置する営農型太陽光発電や、静岡県産の未利用間伐材を利用したバイオマス発電への参画など、地域の課題解決につながる取り組みを通じて持続可能な社会の構築に貢献しています。

電力事業の現況と今後の取り組み方針を教えてください。

 電力事業では、省エネルギーとカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを推進し、顧客基盤の一層の拡大を図っていきます。契約電力の低減をサポートする「節約応援プラン」や、地域の省エネ活動によって生じるCO2削減価値(J-クレジット)を利用してお客さまに実質CO2フリーの電気をお届けする「エコプラス」など、料金メニューの多様化を図っています。2024年8月には、新たにオール電化住宅向けの料金メニューの提供を開始し、太陽光パネルとエコキュートの最適利用を後押ししていきます。また、お客さまの節電、省エネを応援するスマートフォン向けアプリの提供など省エネ効果の見える化にも取り組んでいます。

海外展開については、どのようにお考えでしょうか。

 人口が減少し、市場規模の縮小が見込まれる国内だけに注力していては、さらなる成長は望めません。当社は中長期の成長を見据えて、タイで産業用天然ガスの供給事業を推進しているほか、インドネシアでも現地企業と協力しながらガスエネルギー事業を展開しています。2024年7月には、インドでバイオガスの生成・販売を手掛ける現地企業と資本業務提携し、同事業に本格参入することを発表しました。これに加えて、複数のプロジェクトへの参画を検討しており、引き続き海外事業基盤の拡充に積極的に取り組んでいく方針です。

静岡ガスグループがさらなる成長を追求していく上で、対処すべき課題や経営テーマはありますか。

 最大の課題は、事業戦略遂行の担い手である人材の育成と活用です。社内人材の育成や開発に注力しつつ、キャリア採用も活用することで、必要な人材を獲得していきます。早期のビジョン実現を目指し、社員のモチベーションを高めるため、人事制度の見直しに着手しています。また、社員の意識改革を図ると同時に、一人ひとりの自律的な行動とチャレンジを尊重する自由闊達な企業文化を醸成していくことも私の大切な任務だと捉えています。

最後に、株主の皆さまにメッセージをお願いします。

 当社グループは創立以来、くらしと産業に欠かせないエネルギーの安定供給を通じて地域社会の発展に貢献してきました。当社グループを取り巻く事業環境は先行き不透明な状況を想定していますが、時代がどれだけ変わろうとも、地域の皆さまが必要とする価値やサービスを提供するという基本姿勢に変わりはありません。2030年ビジョン、2050年カーボンニュートラルビジョンの実現に向けた戦略を確実に推進し企業価値を向上させつつ、継続的に株主還元の充実も図ってまいります。こうした方針のもと、株主の皆さまの日頃のご支援にお応えするため、当社グループの中長期的な業績予想等に基づき、今後の業績や株主資本配当率などを総合的に勘案し、当期の年間配当予想を26円から40円に増配することを決定しました。株主の皆さまには、より一層のご理解とご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。