2030年ビジョンの具現化に向けた取り組みを加速し、
地域社会の発展と持続可能な社会の構築に貢献してまいります
社長就任が決まったときの率直なお気持ちや、社長を引き受けようと決心された理由をお聞かせください。
社長就任の打診を受けたときは、まったく想定していなかったので、びっくりしたというのが正直なところです。ただ、これまでの会社員人生で上司や先輩方に育てていただいたという思いが強かったので、その恩返しをする良いチャンスだとも考えました。また何よりも、静岡ガスの企業理念でもある地域社会の発展にトップとして献身したいという気持ちが強く、就任を引き受けた次第です。岸田会長との強固なチームワークのもと、社外役員の皆さまなど様々な視点からの意見にも真摯に耳を傾けながら、経営に邁進していきたいと気を引き締めています。
松本新社長がどんな方か関心を持たれている株主さまも多いと思います。静岡ガスに入社された動機やきっかけを教えていただけますか。
私は大阪大学理学部で高分子化学を専攻しました。卒業後の進路として研究者の道も考えましたが、出身地である静岡に戻ることにしました。静岡ガスを選んだのは、地元の経済社会に貢献している公共性の高い企業であることに加え、その業態から、大学で学んだ高分子化学の知識や知見を活かせるのではないかと考えたことが主な理由です。
静岡ガスでの経歴を教えてください。また、特に印象に残っている仕事や転機となった出来事などがあれば併せてお聞かせください。
入社後は、様々な部署で経験を積んだあと、家庭用営業を担当するくらし事業本部マーケット開発部長(当時)、電力事業を担当するエネルギー戦略部長(当時)を経て、2021年に執行役員に就任しました。2023年1月からは、常務執行役員 経営戦略本部長として、当社グループの中長期戦略の策定と実行に注力してきました。
若手時代から、多様な部門で仕事をさせてもらい、貴重な経験をすることができたので、印象に残った仕事をひとつに限定することはできません。ただ、10年ほど前にプロフェッショナルな専門職という立場から、マネジャーとして部下やスタッフと一緒に仕事をするようになった時がひとつの転機でした。管理職としてチーム運営に携わるようになったことで、組織やビジネスについてより大局的な見方ができるようになったと思います。
管理職として、あるいは執行役員として大切にしてこられた信条やモットーはどのようなものでしょうか。
ビジネスは人が動かすものです。企業や事業が成長していくためには、人材の育成や活躍支援、人材投資、組織開発といった人的資本の強化に向けた取り組みが欠かせません。社員一人ひとりの力をどのように引き出していくか、その力をどうやって結集し、組織力まで高めていくか、常にそのことを考えながら仕事をしてきました。今後は社長としてグループ全体の人的基盤の強化や組織力の向上に注力してまいります。
これまでの経験や立場を踏まえ、静岡ガスグループの特長や強みは何だとお考えでしょうか。
最大の強みは、110年以上の当社の歴史の中で培ってきた強固なお客さま基盤だと考えています。お客さまから寄せられる信頼こそ、当社グループの最大の財産であり、成長の源泉です。今後もお客さまとの緊密な関係を大切にしながら、安全・安心な地域社会の形成に寄与していく考えです。
当社の強みをもうひとつ挙げるとすれば、真面目で誠実な社員が多いことです。お客さまなどステークホルダーからもそのような評価をいただいていますが、真面目であるがゆえに、やや保守的で現状に満足しやすい傾向があるのも事実です。当社グループはいま、外部環境の変化に即した事業ポートフォリオの確立に向けて、新たな成長事業の強化、確立に力を注いでいます。その担い手を多数輩出するためにも、社員の意識改革と挑戦を重んじる組織風土の醸成に積極的に取り組んでいくことが必要です。
静岡ガスグループの目指すべき姿や方向性について、どのような展望をお持ちでしょうか。
当社グループはいま「静岡ガスグループ 2030年ビジョン」の着実な進捗に経営資源を集中しています。2030年ビジョンでは、地域が保有する多彩なデータを結合した連携基盤のもと、地元企業や自治体、地域住民と協調し、独自の価値を共創していく新たな価値創造サイクルの確立を目指しています。当社グループはこの循環モデルの中核的な存在として、地域の皆さまが必要とする価値やサービスを創出し、安全・安心な地域社会の形成と地域の皆さまのQOL(※)の向上に取り組んでいきます。「地域No.1ソリューション企業グループ」の実現を2025年のマイルストーンとして、持続可能なくらしやすい地域の実現に貢献する企業へと進化させてまいります。
(※)一人ひとりが自分らしい生活を送り、人生に幸福を感じているかという”生活の質“。
静岡ガスグループは現在、ポートフォリオ変革の取り組みに注力されています。目標とする事業構造についてご説明ください。
2030年ビジョン具現化のためには、時代の変化を先取りした戦略的な事業ポートフォリオの構築が欠かせません。都市ガス事業が経常利益の約8割を占める事業構造を変革し、2030年には電力・再生可能エネルギー、くらしサービス/エンジニアリングサービス、海外などの成長事業が約5割を稼ぐ多角的な事業ポートフォリオを目指します。都市ガス事業においては、まだ成長の余地はあると考えており、さらなる投資で収益の安定化を図りつつ、新たな成長事業と位置付ける再生可能エネルギーや海外事業においては、人材や資金などの経営資源を重点配分し、業容の拡大を促進していく考えです。
自然環境ならびに経済社会のサステナビリティへの貢献については、どのような取り組みを進めていますか。
地球温暖化対策への社会的要請の高まりを受けて、2021年8月に「2050年カーボンニュートラルビジョン」を策定、環境・社会の持続可能性に係わる当社グループの中長期的な方向性と具体的な施策を打ち出しました。燃料転換等による天然ガスシフトやエネルギーの高度利用などによる低炭素化の取り組みを加速させるとともに、カーボンニュートラルガスの販売、再生可能エネルギー電源の開発、水素・アンモニア利用の拡大など、様々な取り組みを通じて、持続可能な地域社会の形成に寄与し、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。
静岡ガスグループがビジョンの実現に向けて継続的な成長を図っていく上で、特に対処が必要な課題がありましたらご教示ください。
ビジョン達成に向けた取り組みはまだ始まったばかりであり、ダイバーシティの拡大、DXの取り組み、社員の活躍支援と組織風土改革、地元自治体・企業との連携強化、実効性ある投資の実行など、対処すべき課題はたくさんあります。私は社長執行役員として、お客さま、株主さま、お取引先、地域社会の皆さまなどステークホルダーの方々との絆をより深めつつ、健全かつ革新的な経営を通じて企業価値の最大化を追求していく決意です。特に最重要課題のひとつである人的基盤の強化については、教育研修を通じた多様な人材の育成と人員の適正配置にとどまらず、マネジメントと社員の直接対話と経営トップからの適切な情報発信により、社員のチャレンジ精神を喚起していく考えです。
最後に、株主の皆さまへのメッセージをお願いします。
静岡ガスは1910年の創立以来、エネルギーの安定供給を通じて地域社会に貢献し、着実な成長を達成してきました。これはひとえに株主さまをはじめ、ステークホルダーの皆さまのご支援によるものと深く感謝しております。引き続き、当社グループの成長軌道を維持・拡大し、ビジョンの具現化に全力を傾注してまいります。
株主の皆さまに対しては、業績と株主資本配当率(DOE)に基づく安定した配当と、適切な将来投資による継続的な利益成長により、そのご期待に応えてまいる所存です。なお一層のご理解とご支援を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。