実需を起点としたバリューチェーンを強みに
既存事業を深化させ、新たな領域に挑み続けます

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- 代表取締役 社長執行役員 松本尚武
2026年上期の事業環境をどのように評価していますか。
上期は中東情勢の緊迫化、円安、高気温など、不確実性が高い事業環境が続きました。なかでも中東情勢は、原油市場・LNG市場に短期的に大きな影響を与え、為替も円安基調で推移しました。都市ガス事業は、原料価格の変動を原料費調整制度によってガス料金に反映できる仕組みとなっています。一方、海外事業への投資については、為替変動をはじめとする事業環境の変化が収益性に影響するため、案件ごとのリスクとリターンを慎重に見極めていきます。
今後も短期的な変化には機動的に対応するとともに、中長期的な視点をもって経営にあたっていきます。
上期の業績について、販売状況や主な増減要因も含めてご説明ください。
都市ガス事業では、高気温の影響で家庭用や業務用の販売量が前年同期を下回った一方、工業用や卸売が堅調に推移したことから、全体では前年同期を上回りました。電力事業では、お客さま件数の増加などにより、販売量が前年同期を上回りました。家庭用では、自由化の進展により他事業者との競争が進んでいますが、業務用には開拓余地があると考えており、提案活動を強化しています。
上期の業績については、原油価格やLNGスポット価格の上昇がありましたが、当社グループでは、スポット調達に頼らない長期契約を中心とした安定的なLNG調達を行っていることなどから、調達面で収益にプラスの効果がありました。さらに、電力事業の伸長に加え、昨年以降に当社グループに加わった会社の業績寄与もありました。売上高については、ガス販売単価の下方調整などの影響により前年同期を下回ったものの、経常利益は前年同期を上回りました。
足元の外部環境リスクを、どのようにご覧になっていますか。
中東情勢は、いまだ予断を許さない状況が続いており、緊張感をもって注視しています。当社グループではLNGを長期契約に基づいて調達しているため、安定供給そのものに大きな影響はないと考えています。
一方で、こうした状況が長期化した場合には、原油価格やLNG価格、為替の変動に加え、エネルギー価格の上昇を通じてお客さまの需要動向に影響が及ぶ可能性があります。現時点では、家庭用のお客さまの使用量や産業用のお客さまの生産活動に大きな変化はみられていませんが、今後の動向を慎重に見極めていきます。
通期の業績見通しと、下期に重点的に取り組むことについてお聞かせください。
上期は、外部環境が不安定に推移するなかでも、計画を上回る業績となりました。一方、下期は、原油価格やLNG価格、為替の変動など不透明な要素が多く、これらが業績に影響する可能性があります。現時点では、こうした変動要素を慎重に見極めながらも、通期ではおおむね計画水準での着地を見込んでいます。また、これらの変動要素は2027年以降にも影響を及ぼす可能性があるため、引き続き注視していきます。
下期は、需要動向や市場価格、LNG在庫を見極めながら、自社発電所の稼働も含めた最適な需給管理を通じて、収支の最適化を図っていきます。
将来の成長に向けた投資についても、現在検討中の案件を着実に進めるとともに、新たな投資機会の発掘に取り組んでいきます。
東京ガスおよびPETRONAS LNGとの中長期LNG売買契約の狙いと意義をお聞かせください。
今回の契約はいずれも、売主としての信頼性や、価格を含む契約条件などを総合的に判断したものです。東京ガス様には、清水エル・エヌ・ジーのLNG基地の建設段階から、天然ガスの普及拡大や販売面でご支援いただいてきました。PETRONAS LNG様は、1996年に当社が初めて受け入れたLNGを供給いただいた売主であり、当社のLNG事業の開始当初から関係を築いてきた重要なパートナーです。
中東情勢をはじめ、エネルギーを取り巻く環境の不確実性が高まるなか、安定的な調達体制を確保することは重要な経営課題です。両社との信頼関係をさらに深めながら、LNG調達の安定性向上と調達先の多様化を進め、中長期的なエネルギーの安定供給につなげていきます。
MidOcean Energyへの出資参画の背景と今後の方向性をご説明ください。
当社グループの強みは、実需を起点とした天然ガスバリューチェーンです。この強みを活かし、都市ガス・LPG、電力・再エネ、くらしサービス・エンジニアリングサービス、海外事業へと事業領域を広げてきました。
昨年は北米のシェールガス開発事業に参画し、天然ガスバリューチェーンの上流分野にも進出しました。さらに今回のMidOcean Energy様への出資参画を通じて、当社単独では参画が容易ではない上流・中流分野を含む海外LNG事業への関与を広げ、LNGの開発・液化・販売・輸送までを含む天然ガスバリューチェーンをさらに拡大していきます。
これにより、天然ガスバリューチェーンを上流から下流までつなぎ、その価値を高め、収益基盤のさらなる充実につなげていきます。また、市場環境の変化にも柔軟に対応できる事業基盤を築き、中長期的な成長を目指していきます。
2026年1月に実施したグループ再編について、上期の進捗をお聞かせください。
グループ再編の目的は、成長とガバナンス向上の両立です。
成長面では、事業投資やM&Aを通じて、新たな事業領域の拡大が進んでいます。ハウジング事業やエンジニアリングサービス事業では新たな企業をグループに迎えました。いずれも地域に根ざした強みを持つ企業であり、当社グループの理念に共感いただき、グループに加わっていただいています。
一方、ガバナンス面では、グループ経営基盤の強化に向けて、内部統制の整備や社員の意識改革などに取り組んできました。こうした取り組みはまだ端緒に就いた段階ですが、グループ各社が主体的に課題を見つけ、改善に取り組む動きも生まれています。今後も、成長とガバナンス向上を両立させるグループ経営の基盤づくりを着実に進めていきます。
事業領域の拡大が進むなか、ガバナンス・リスク管理をどのように強化していくのでしょうか。
事業投資やM&Aについては、投資委員会で案件ごとにリスク評価を行い、その上で経営会議において投資の是非を議論し、必要に応じて社長承認または取締役会決議を得るプロセスとしています。投資後も、投資委員会で定期的な進捗評価を行い、経営会議や取締役会へ報告しています。計画との乖離が見られる案件については、改善策を含めて報告し、必要な対応につなげています。
さらに、グループ全体のリスクについてはリスク管理委員会がモニタリングを行い、リスク管理体制の強化を進めています。
下期に向けては、グループ再編に伴い設置した中間持株会社が中心となり、PMIの推進や事業のモニタリング、ITインフラ整備などを重点課題として取り組んでいきます。
今後は、個社単位の視点にとどまらず、当社グループ全体として最適な運営を考える意識をさらに浸透させるとともに、ガバナンスの実効性を高め、グループ経営基盤の強化を進めていきます。
地域共創に向けた上期の主な取り組みについて教えてください。
当社グループは、「地域づくり」「環境・安全・安心」「文化・スポーツ」を地域貢献の三つの柱とし、地域課題の解決に向けた取り組みを進めています。こうした活動は地域との信頼関係を深め、長期的なブランド価値向上にもつながるものです。
上期には、こども食堂への支援やレシピの提供、体験イベントの開催などを通じて、こどもたちの居場所づくりを支援する「こどもの居場所」応援活動を進めました。
静岡銀行様、ジェクトワン様などと連携し、「静岡移住住みかえサポート」サービスも開始しました。首都圏から静岡市への移住を検討される方の住まいの売却や活用から、移住先での住宅取得や資金相談までを支援するサービスで、定住人口の減少や空き家の増加といった地域課題の解決に取り組んでいきます。
今後も、地域との共創を通じて地域の発展に貢献し、新たな価値の創出や持続的な成長につなげていきます。
「健康経営優良法人(ホワイト500)」への初認定を踏まえ、人的資本の取り組みをどのように進めていきますか。
健康経営は人的資本経営を支える重要な基盤の一つと位置付けており、「健康経営優良法人(ホワイト500)」への初認定は、これまで推進してきた取り組みが評価された結果と受け止めています。一方で、認定の取得自体が目的ではなく、社員一人ひとりが心身ともに健康で、いきいきと能力を発揮できる環境づくりを継続的に進めることが重要であると考えています。
今後は健康施策の推進に加え、働きやすさや働きがいの向上にも取り組みます。また、キャリア採用やM&Aを通じて加わった多様な人材が活躍できる環境を整えるとともに、従来の個社単位での人材育成に加え、グループ会社間でのジョブローテーションや人材交流を進めていきます。さらに、1on1やタウンホールミーティングの充実など組織開発を進め、社員が主体的に挑戦し成長できる企業風土を醸成していきます。
こうした取り組みを通じて、グループ全体の人的資本の充実を図り、持続的な成長と企業価値の向上につなげていきます。
2026年下期に向けて、特に注力する経営テーマは何でしょうか。
最も重要なテーマは、中東情勢の変化への的確な対応です。短期的には、原油価格やLNGスポット価格、為替、需要動向の変化を注視し、都市ガス事業をはじめとした各事業の運営に機動的に反映していきます。
今回の中東情勢の変化は、エネルギーを取り巻く環境や事業構造に中長期的な影響を及ぼす可能性があります。こうした変化を的確に見極めながら、当社グループの強みを活かせる分野や今後の成長が見込まれる分野への参画を進め、新たな事業機会を着実に捉えていきます。
投資については、リスクや意義、見合うリターンを慎重に見極めたうえで判断していきます。環境変化への対応と成長機会の追求を両立させることが、今後の重要な経営課題だと考えています。
株主還元方針も踏まえ、株主の皆さまへのメッセージをお願いします。
株主還元方針は、累進的配当を基本方針とし、配当性向3割を目標水準としています。当期の年間配当予想は1株当たり45円とし、従来予想から1円増配とすることを決議しました。今後も、成長投資とのバランスを図りながら、安定的かつ継続的な配当を実施してまいります。
社長就任から2年半が過ぎましたが、実需を起点とした天然ガスバリューチェーンという当社グループの強みを、これまで以上に企業価値の向上へ結び付けていきたいと考えています。
既存事業をさらに深化させるとともに、新たな成長領域への挑戦を続け、グループ経営の基盤となるガバナンスの向上にも継続的に取り組んでいきます。
これらの取り組みを通じて、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図り、その成果を株主の皆さまに還元してまいります。
株主の皆さまには、今後も変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。