成長への積極投資とガバナンスを両立させつつ

事業領域の拡大を加速していきます

代表取締役 社長執行役員 松本尚武
拡大
代表取締役 社長執行役員 松本尚武

2025年度の事業環境変化とその対応について教えてください。

2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、天然ガスはカーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源と位置付けられました。地政学的リスクの顕在化などを背景に、安定供給の重要性が再認識され、天然ガスの役割は一段と大きくなったと受け止めています。当社グループとしてもその責任とさらなる可能性を強く認識しています。

LNG調達・受入基地・導管ネットワーク・小売といった天然ガスバリューチェーンと安定した顧客基盤は、当社グループがこれまで培ってきた強みであり、こうした環境変化はそれらの価値を改めて押し上げるものだと考えています。当社グループとしては、北米での上流資源開発への参画や、天然ガス火力発電所の増設など、将来の安定供給と成長の両面に資する施策に取り組み、バリューチェーン全体の拡大・最適化を進めています。

当期の業績についてお聞かせください。

都市ガスの販売量は、工業用需要の伸びもあり、堅調に推移しました。電力についてもお客さま数が10万件に達するなど着実に基盤が拡大しています。ハウジング分野でも、静岡県西部地区の住宅メーカーであるグッドリビング株式会社をグループ会社に迎え、事業領域の拡大が着実に進みました。売上高は、原料費調整制度によるガス販売単価の下方調整などにより、前期に比べ微減となりました。一方で、LNG調達の工夫やスライドタイムラグ等で利益は伸長し、減収増益の決算となりました。

新グループ企業理念の制定の背景と意義をお聞かせください。

これまでの企業理念は高度成長期に制定されたものでした。現在では事業環境が大きく変化し、事業領域も都市ガスだけでなくLPガスや電力、将来的な水素を含めたエネルギー全般に広がっています。事業展開も静岡ガス単体だけでなくグループ総合力を活かす段階になりました。このような変化を踏まえ、地域社会の発展に貢献するという本質は継承しながら、「エネルギーを中心としたグループ総合力で、豊かで持続可能な未来を追い求めます」という新理念を掲げました。

新ブランドスローガン「湧く想い、沸かせる未来。」に込めた狙いについて教えてください。

これまで成長を支えてきた都市ガス事業の成熟を見据え、さらなる成長のためには、事業領域の拡大と新たな価値創出が必要です。そのためには、社員のマインドを「現状の延長」ではなく「ゼロを1にして、1を100にする」発想に変えていく必要があり、社員みずからが議論を重ね、新たなブランドスローガンを策定しました。社内ではタウンホールミーティングや1on1で浸透を図り、社外には事業や地域貢献の取り組みを通じて「静岡ガスグループはワクワクさせる会社だ」と感じていただけるよう伝えていきます

2026年1月に実施したグループ再編の目的と背景についてご説明ください。

当社グループの持続的な成長には、事業領域の拡大が不可欠です。既存事業の成長に加えて、M&Aによる成長にも取り組んでいます。その過程で、モニタリング不足や環境変化への対応の遅れなど、ガバナンス上の課題が見えてきました。今後の成長とガバナンス向上の両立を目的にグループ再編を行い、管理部門集約による効率化と、経営人材育成の観点から有望な社員の経営者への任用も進めています。

中間持株会社の設立による期待・効果と具体化していく方法について教えてください。

中間持株会社は、類似の事業領域にあるグループ会社をまとめ、さらなる成長を促すために設立しました。これまで個社ごと進めていた事業を、中間持株会社の下に集約することで、グループ化後の経営統合(PMI)の強化や類似事業間のシナジー創出につなげます。今後、M&Aを行う場合も類似事業領域の会社については中間持株会社の傘下に加えることで、より効率的・体系的に進められると考えています。

「グループ2030年ビジョン」の概要と中期経営計画の位置づけについてご説明ください。

「グループ2030年ビジョン」では、2030年代のあるべき姿として「地域共創の実現へ」を掲げ、基盤事業である都市ガス事業は継続的な成長を図りつつ、新たな成長事業を確立することで、2030年の連結経常利益130億円、経常利益に占める都市ガス事業以外の比率 50%を目指します。中期経営計画は、グループ2030年ビジョンの進捗確認と環境変化への対応を機動的に行うため、毎年見直しています。

現時点での進捗と、今後の重点テーマや資源配分について教えてください。

当社グループは、利益規模として100億円超の水準に達したと認識しています。グループ2030年ビジョン実現に向け、重点テーマは「事業領域の拡大」と「ガバナンスの強化」です。

事業領域の拡大では、強みである天然ガスバリューチェーンの拡大・最適化と、強固な顧客基盤を活かしハウジング分野などの周辺事業の拡張に取り組みます。

ガバナンス面では、投資判断にあたり資本効率を強く意識し、事業別の投資基準を設け、リスクとリターンを検証し、厳格なプロセスで投資判断を行います。

各事業における今後の戦略についてお聞かせください。

基盤事業である都市ガス事業は、効率化を進めつつ、バリューチェーン全体での価値の最適化に注力します。LPG事業では、事業承継上の課題を抱える販売店のM&A等も活用して拡大を進めていきます。電力・再エネ事業では、自社電源の開発や再エネ由来の電力の提供により顧客基盤の拡大を図ります。くらしサービス事業では、ハウジング分野として新築住宅・リフォーム・リノベーションから不動産取引までを一貫してカバーする取り組みを展開していきます。エンジニアリング事業では、ボイラーや工業炉から空調へと拡張を図ります。海外事業では、米国での上流事業参入も含め、バリューチェーンの拡大に注力していきます。

これらの取り組みを進めるための人材の確保と育成について教えてください。

社員の成長なくして企業の成長はないと考え、採用、教育、評価など人事制度を連動させ、社員が力を発揮できる環境づくりを進めています。

人材については、新卒採用・キャリア採用・M&Aで確保しており、近年は即戦力となるキャリア採用の割合が高くなっています。育成面では、若手社員は複数領域の経験を通じて視野とスキルを広げ、年齢に応じてスペシャリストまたはマネジメントとして育成していく方針です。グループ横断のジョブローテーションを積極的に推進するとともに、女性幹部職の育成にも取り組んでいます。

組織面では、心理的安全性の高いボトムアップ型の組織づくりを重視しています。タウンホールミーティングや1on1、役員メンター制度などでコミュニケーションを強化した結果、社員エンゲージメントは着実に向上しており、取り組みの成果が表れ始めています。

地域共創やDX推進などへの対応についてお聞かせください。

「地域共創」には、当社として二つの意味があります。

一つ目は、事業面での地域共創です。事業領域が広がる中、当社グループだけでできることには限界があります。事業ごとに最適なパートナーと連携し、協働することが成長の前提であり、事業価値を高める鍵になります。

二つ目は、静岡という地域との共創です。自治体や大学などとの連携を本格化しており、地域課題の解決や地域活性化に貢献する取り組みを広げています。

これら二つの「地域共創」を通じ、当社グループは事業面でも社会面でも地域とのつながりを深め、共に持続可能な未来をつくっていきたいと考えています。

 

DXは、バックオフィスや現場オペレーションの効率化に向けたツールの導入は進んでいますが、業務プロセスそのものを見直して効率化・共通化した上でデジタルを活用する段階まで至っていないという認識です。

今後は、デジタルマーケティングなどお客さまへの付加価値提供の強化に取り組むため、現場と本社の取り組みを統合し、全社的なDXを加速させていきたいと考えています。社員のデジタルスキル向上の一環として、ITパスポートの取得も推進しています。

資本コストと株価を意識した経営や 配当政策について教えてください。

2025年2月に「資本コストと株価を意識した経営」を公表しましたが、現状では、PBRは1倍を下回っています。

PBRの改善には、ROE向上と当社グループの魅力を適切に情報発信することが重要です。ROE向上に向けては、成長分野への積極的な投資と、投資資金の一部を負債で調達することでレバレッジ効果を高め、資本効率の改善を図っていきます。私自身も積極的に投資家の皆さまと対話を重ね、事業の成長性や強みをしっかりとお伝えすることで、当社グループの価値を適切に評価していただけるよう努めていきます。

配当については、当期の期末配当を従来予想から増配し、年間配当金は43円といたしました。今後も累進配当を基本に配当性向はおおむね3割を目標とし、利益の成長に応じた配当を行い、株主の皆さまへの還元を強化していきます。

 

今後も、グループの成長とガバナンスの両立を通じて企業価値の向上を図り、株主の皆さまのご期待に応えてまいります。引き続きのご支援を心よりお願い申し上げます。